第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会

ご挨拶

第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会
会長 赤木 究
(埼玉県立がんセンター腫瘍診断・予防科)

第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会の会長を仰せつかりました、埼玉県立がんセンター腫瘍診断・予防科の赤木究でございます。この度、国立がん研究センター東病院腫瘍内科の向原徹先生と二人会長で、2021年6月18日(金曜日)・19日(土曜日)に埼玉会館(浦和市)で本学術集会を開催させていただきます。昨年来より私たちを悩ませてきました新型コロナウイルス感染も未だ解決の見通しが立っておりませんが、現地とオンラインの両方で行うハイブリッド形式で開催を計画しております。十分な感染対策を行いながら、両方の良さを最大限に引き出し、有意義な学術集会になることを目指しております。

今回のテーマは単刀直入に「がんゲノム医療と遺伝医療~ボーダレス化の中で躍動する~」としました。がんゲノム医療、遺伝医療の特徴の一つは、関係する診療科・職種が多岐にわたり、それらを統合した医療として提供することの難しさにあります。本学会の会員は、様々な領域の専門家、様々な職種より構成されており、これまで以上に診療科間、職種間の垣根を取り払い、連携しながら活躍していくことが期待されています。そうした思いをこのテーマに託しました。
その試金石となるのが、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)とリンチ症候群に対する診療体制の構築になります。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群は「相同組換え修復異常の一部」、リンチ症候群は「ミスマッチ修復異常の一部」というより広い視野でがん医療を捉え、遺伝性腫瘍を日常診療のなかで意識する必要があります。
本学術集会では、HBOC、リンチ症候群のみならず、その他の遺伝性腫瘍、がんゲノムプロファイリング検査を用いた診療、すぐそこに迫っている全ゲノムシークエンス時代への対応、オンライン遺伝外来、個人情報・ゲノム情報の取り扱い、事例検討、バリアントの評価、データベース、人工知能の活用、国際交流など様々な角度から遺伝性腫瘍を学び、考える場を提供できればと思っております。また、遺伝性腫瘍について基本的なことを学びたいという方のために、学術集会期間中、充実した教育プログラムをオンデマンドで配信する予定です。
多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。


第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会
会長 向原 徹
(国立がん研究センター東病院 腫瘍内科)

第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会の会長を仰せつかりました、国立がん研究センター東病院の向原徹と申します。この度、埼玉県立がんセンターの赤木究先生とともに、このような大役を務めさせていただくことを大変光栄に思っております。
 がん医療はゲノム時代に入ったと言われます。2019年以来、保険診療としてがん遺伝子パネル検査が実施されるようになり、従来であれば見逃されていた発がんに関わる遺伝的要因が明らかになることが増えています。また、BRCA遺伝子型に基づいてPARP阻害薬が投与されるがん種も、乳がん、卵巣がんのみならず、前立腺がん、膵がんと増加しており、リンチ症候群関連がんで高頻度にみられるミスマッチ修復欠損のあるがんにおいては免疫チェックポイント阻害薬の有効性も示されています。このように、従来、遺伝性腫瘍に係る遺伝学的検査は、遺伝学、病因学、予防学的意義に留まっていたものが、治療学的な意義をも持つようになってきました。すなわち、従来生殖細胞系列の遺伝子変化に主に着目してきた遺伝医療と、体細胞レベルでの遺伝子変化に主に着目してきたがんゲノム医療とは、より密接な関係をもつようになり、もはやボーダレスであるべき時代に入ったと言えます。このことが、腫瘍内科医である私が本学術集会の会長にご指名いただいた所以であると考えていますし、学会のテーマ「がんゲノム医療と遺伝医療- ボーダレス化のなかで躍動する-」に込められたメッセージでもあります。
 このボーダレス化の中で、チームによるアプローチが極めて重要になりつつあります。遺伝専門医とがん治療医は車の両輪の如く連携するのは勿論、チームメンバーであるカウンセラー、看護師、薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、ペイシェント・アドボケイト、が共通言語をもってコミュニケーションを図るべきです。さらには、国民が遺伝情報を知る機会が増えていくなかで、社会の在り方、教育の在り方、をも進化させていく必要があり、それを阻むボーダーを取り除いていく努力が求められています。コロナ禍にあって、学会員の皆様と一同に会せないのは極めて残念ではありますが、この学術集会が、まさにボーダレス化のきっかけとなれば幸いです。

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